カナダでキャリア模索中の30代の日常

カナダのトロントでワーホリ終了後にカレッジで幼児教育の勉強をしました。オンタリオ州のRECEとして働いた後、現在は発達障がいの方を支援する非営利団体に勤めています。

デイケアは利益を出すべきなのか?- 営利デイケアと非営利デイケアの違い

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今回の記事はChildcare Resource and Reserch Unitが発行しているジャーナル、BRIEFing NOTESの記事、What research says about quality in for-profit, non-profit and public childcareを参考にさせて頂きました。

こちらは非営利デイケアと営利デイケアのチャイルドケアの質に関するリサーチについて書かれた記事なのですが、2004年のカナダのデータでは非営利デイケアの方が営利デイケアに比べて10%質が良いチャイルドケアを提供しているという結果がでました。そして、2008年のトロントで行われた調査では0歳児から未就学児までの年齢グループ(Infant/ Toddler/ Preschool)では非営利デイケアが安定して営利デイケアより高品質なケアを提供しており、公立のデイケアが全ての年齢グループにおいてベストな質を提供しているという結果が出ました。特にスタッフの給与スタッフの育成助成金の用途などにに差がありそれが要因となっていました。2004年の調査で特に質の差が目立っていた項目は、

  • 子供のパーソナルケア
  • 言語の発達に関するマテリアルの使い方、アクティビティ、先生と子供間の交流
  • スタッフと保護者のコミュニケーション
  • スタッフのニーズに対するサポート

でした。

もちろんこの結果に当てはまらず営利デイケアの中にも素晴らしいデイケアはあると思います。ですが、一般的には営利デイケアと非営利デイケアの差はデータで明らかになっています。ここからは私の一個人の体験談を話します。私は昨年の8月にカレッジ卒業後Early Childhood Educatorのライセンスを取得して働き始めました。9月に初めて就職したセンターは新しくオープンした営利目的のデイケアでした。そちらのデイケアは労働環境があまり良くなく3ヶ月で退職してしまったのですが、その後に転職したのは現在の職場である公立幼稚園の施設内にある非営利のチャイルドケア(Before and After School Program)でした。初めに就職したセンターは常にギリギリの人員で運営していた上に清掃や消毒スタッフがいなかった為、私一人でECEの業務(事務作業、アクティビティ計画と実施、子供のケア)から清掃までこなしていました。また、翌週のアクティビティ計画をする時間が業務時間内に含まれておらず、週末に計画を立てた後、マテリアルを買い出しに行っていました。センターには十分な教材がない上に予算が少なく、自分のお金を使って工作の材料を購入したりすることもありました。一方で、センターの新築の自社ビルはとても綺麗で、ハロウィンやクリスマスのデコレーションにはたくさん予算をかけている様子でした。また、『親御さんはお客様である』という意識が強く、親御さんの満足度を上げることに運営が集中していました。例えば、子供が何度も同じ問題行動を起こした時でも親御さんに報告や相談はしてはいけないと言われたり、また、親御さんにはコミュニケーションアプリを通して何枚も写真を送るように指示されいたので子供を片手で抱えながら片手でタブレットを一日中操作している状態でした。スーパーバイザーは営利デイケアを運営し、親御さんの顧客満足度を上げるという点ではとてもやり手の方で、実際にセンターも5つ星のレビューをたくさんもらっていました。ですが、途中からこれは本当に子供達の為になっているのかと疑問に感じ始めた私はセンターの方針に不信感を抱き始めました。そんな時、今働いている非営利デイケアに採用されたので迷わず転職を決意しました。現在働いているセンターは人員が十分に配置されていて閉園後には清掃スタッフの方が来ます。マテリアルや教材も豊富でアクティビティの予算が十分にあり、オンタリオ州の幼稚園とデイケアガイドラインに沿って子供主体のカリキュラムが毎週組まれています。オンタリオ州の幼稚園は質問の答えを探したり問題解決を通して学ぶ探求学習(Inquiry based curriculum)を採用しているのですが、私のデイケアもそれに従っています。また、子供達が今取り組んでいるアクティビティを発展させる形で次のアクティビティを組んで行くので、結果的に子供達は自分の興味に従い長期のプロジェクト取り組む中で様々な能力を伸ばしていきます。そして、子供主体のカリキュラムを維持する為に観察記録が重要視されています。なので、書類の記入などは前のデイケアに比べて多いのですが業務時間内にデスクに向かって作業する時間が用意されているのでその間に事務作業を終わらせることが可能です。また待遇も良くなり給与も上がりました。今は仕事のストレスが少なく、心身共に余裕があるのでそれが仕事にも良い影響を与えています。

以上、今回の記事は営利デイケアと非営利デイケアに関する記事でした。これからECEを目指す方の就職活動の参考になれば幸いです。